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「探検隊メンバーの教室での姿を知りたい」

1年A組/大高万里・志水健司
「おーい万里、ちょっと現文のノート見せて」
「やだ減る断る」
「ちょっとだけでいいから。次当たるから」
「やだ当てられるのわかってるのに予習してこないのが悪い」
「予習してきたけど合ってるかどうがちょっと心配なんだよ、俺現国苦手だし」
「そんなの知らない勝手に間違って恥かけばか」


「……なあ志水、何で大高って、あんな罵詈雑言吐きながら鞄からノート出して結局おまえに貸してんの……?」
 万里の現代国語のノートを手にしながら自分の席に戻ってきた志水を見て、クラスメイトが不思議そうに。
 ああ、と志水が笑う。
「それが万里だからなあ」
「いやわからん。よくつき合ってるなあれに」
 感心したように買うクラスメイトに、志水は何だかしみじみした気分になる。
「でも最初は呼び掛けても返事もしてくれなかったのに、今じゃ十割反応するんだから、万里もずいぶん人類として進歩したと思う」
「うーん、やっぱりわからん、そうまでして相手する志水が一番わからん……」
 それは志水にもよくわからなかったけど、おもしろいからまあいいや、と思う。


 まだ何となくクラスメイトたちが万里のことを、万里がクラスメイトたちを遠巻きにしていた春先の教室でした。
2年A組/月島正司
「あれっ、正司おまえまだそのランチパック喰ってんの?」
「いやさっき食べてたのたまご。これピーナツ。ちなみにその空き袋がいちごホイップ」
「おま……まだ二時限目だぞ?」
「大丈夫だって、弁当もあるし三限目用のおやつもあるし、心配すんなよ」


 寝てるか食べてるかしてる月島。
 月島がおやつを食べ始めると、なぜかその様子を観察する生徒が数人、机の周囲に集まってくる。
 別におやつを横取りしないし、話しかけもしないし、食べ終わって満足そうな月島を見て、自分たちも満足そうな顔をしながら自分の席に戻る。
 月島の隣の席の生徒は、「何かこのクラスやだな」、と思っている。
 2年E組/磯崎行宏・碧川卓美
「行広、この本、どうもありがとう」
「ん、もう読んだのか。早いな」
「ゆうべ、止まらなくて。徹夜しちゃった」
「大丈夫か、無理はするなよ」
「平気、すごくおもしろくて、途中で止める方が具合悪くなりそう」
「そうか、規典さんのお薦めだからな」
「これ、このまま健司に貸してもいいかな」
「……健司は読書……するのか?」
「え、するよ、すると思うよ、僕が読んでる本貸すこともあるし。……そうか、行広は健司のこと、そういう印象なんだ……」
「いや他意はない。正司並のアウトドア派に見えるから。貸すのは構わないぞ」
「まあたしかにあんまりすすんで読む方ではないみたいだけど。……本を読んでたら、何を読んでるんですかって声掛けてきたから、興味あるかと思って貸したんだけど……迷惑だったらどうしよう」
「いや、迷惑ってことは絶対ないから大丈夫だ」
「だったらいいけど、何で断言?」
「卓美、俺が規典さんから『これおもしろいから読んでみろ』ってたとえ興味のない本でも押しつけられて、迷惑がるところが想像できるか?」
「行広は隊長の好きなものには、何にでも興味があるだろう?」
「そういうことだ」
「……そっか」


 ふたりして、笑う。
 何となくいつもほのぼの。
 でも何となく規典と志水の話ばっかりお互いして、微妙に会話がかみ合ってない日もある。
 ふたりともそれは気にしない。
2年C組/杉館真治
「なあ真治、古典の小テスト範囲どこって言ってたっけ?」
「真治、昼休み体育館いかね、バスケやろうぜ」
「こないだ教えてくれたコロッケ滅茶苦茶うまかったぞ、杉館の友達って言ったらいっこおまけしてくれたし、おまえ何なの?」
「ちょっと聞きたいんだけどさあ、コンビニの面接ってジーパンあり? ありだよな? 大学生っつったらばれるかな、深夜やりたいんだよな俺」
「つかマジ柚麻ちゃんのメアド知りたいんだけど駄目? どうしても駄目? お兄ちゃん?」


 男子にモテモテな長男杉館。
 ひっきりなしに机の周りに人が来る。
3年A組/七瀬豊
「えーと、七瀬……さん、ちょっと数学で聞きたいことあるんすけど……」
「うん? いいよ」
「ごめん、本読んでるとこ」
「大丈夫。っていうか普通に喋っていいのに。同じ学年なんだし」
「やっ、いや、何かそうだけど、微妙に緊張するっていうか」
「俺、そんな先輩風吹かせてるかな」
「い、いやいや、全然っ! ……って、笑ってんなよ……」


 よくない七瀬さん。
 どうせ高校分の勉強は終わってるので、年下の同級生をこっそりもてあそんで暇を潰します。
3年B組/大高規典
「なー、規典すっげー寝てるな。さっきの授業の途中からずっと寝てるけど、起こさなくていいのかあれ」
「何かゆうべずっと本読んでて徹夜したってさ」
「教科書だけ次の数学にすり替えててやるか?」
「……すげぇよな、目開けたままノートに書き込む格好のまま寝れるってさ……」
「あいつすでに人外だよ」
「若干白目剥いてて怖いな……」


寝ていても存在がうるさい大高規典。
数学は好きなのでチャイムが鳴った瞬間起きて教科書とノートをすばやく整え、一部始終を見ていたクラスメイトたちにやっぱり気味悪がられる。
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