・・・・・・・・生徒会の面々、寺口と探険隊について語る・・・・・・・・

高木(書記・一年)「寺口会長と探険隊の大高先輩……ですか? ええと、犬猿の仲、ですよね?」
安本(書記長・二年)「学校でも名物だよな。顔を合わせれば怒濤の如くの舌戦で」
水木(会計・二年)「口げんかで会長と張り合う人間、というか、あの寺口会長がそもそも声を荒らげる場面っていうのがそもそも想像を絶するというか」
野々村(副会長・二年)「会長は時々愛校心が度を超して大演説をぶつことはあるけど、基本的には温厚だからな。テンション上がって喋りまくることはあっても、理不尽に誰かを怒鳴りつけたりってことないのに――」
高木「でも大高先輩と話してる時は、常にこう、語尾にビックリマークがみっつくらいついてる感じじゃないですか?」
安本「つか、いつからそんな仲悪いんだっけ? 去年はあんまり言い争ってる記憶がないんだけど」
野々村「今年の春過ぎくらいからかな。寺口会長の方から、いきなり大高先輩に喧嘩売って、大高先輩があたりまえのように買って……っていうのが始まったような気がする」
高木「見てる分にはおもしろいからいいんですけどね。本気で険悪っていうのとも違うっぽいなあっていうのはわかるし」
安本「仲よく喧嘩してるよな。トムとジェリーみたい」
水木「外野はどうせ参加できないから傍観するしかないし、一般生徒がおもしろがって野次を飛ばすのはまあこの学校のことだからいいんだけど。本気で険悪だって信じて、本気で探険隊を敵対視する人間が執行部の中にいるっていうのは困るよな」
野々村「伊東もなあ。寺口会長への忠誠心と、磯崎を取った大高先輩への嫉妬でわけわかんなくなってる感じで、ちょっと手に負えないよな」
高木「でも伊東が激昂して探険隊に殴り込みに行くの、寺口会長は密かに煽ってますよね。正直、ちょっと、困った人だなあと……あの、オフレコですけど」
野々村「(重々しく)多少困った人じゃないと、この学校の生徒会長なんてできないだろうからな」
安本「まあいいじゃん、どうせ探険隊の人たちも、伊東の殴り込みなんかレクリエーションの一貫程度に思ってるだろうし」
高木「俺、図書室で大高先輩と会長がすごく仲よさそうに笑いながら囁き合ってて、この人たちは一体何なんだろうって思ったことがあります」
水木「まあ図書室で大声で騒ぐわけにもいかないし」
高木「探険隊と生徒会が仲よく喧嘩すること自体は、曙橋の伝統なんですか?」
野々村「だな、探険隊の体質は発足時から今に至るまで変わってないっていうし。本気で廃部っていうか廃会にしようとしてた動きが、資料で残ってる」
安本「俺はあった方が楽しいと思うんだけどさ、探険隊って。生徒会の仮想敵国として。学校行事も盛り上がるし」
水木「だから結局お家お取り潰しの憂き目に遭わないまま続いてるんだろうなあ。生徒会もそうだけど、先生たちの中でもまじめに探険隊を煙たがってる人なんかいないだろうし」
野々村「いや、実はそうでもないらしい。何年か前に、生活指導の先生がものすごく厳しく探険隊を取り締まって、一回活動停止に追い込まれたんじゃなかったかな」
高木「マジですか。そういうことすると、一般生徒が怒るんじゃないかなあ」
野々村「そう。結局、生徒会が先導して署名活動して校長に直談判して、条件付きだけど復活したとか……」
水木「……生徒会が率先か」
安本「俺も万が一自分の任期中にお取り潰しになったら、復活のために署名くらい率先してやるかも」
高木「先輩たちも、物好きですもんねえ」
安本「それはおまえが言うなってつっこまれたいんだよな?」
水木「その生活指導って、今もいるん?」
野々村「その年で移動だったから、そんな『暴挙』に及んだんじゃないかと思う。前に寺口会長から聞いた話だと、何でも作真先生のことが気に入らなくて、坊主憎けりゃの心境で探険隊まで潰そうとしてたらしい」
高木「何となくわからなくもないような。まじめな人だったんでしょうね、その生活指導の先生って」
安本「ウチの学校じゃ生きづらいだろうなあ」
野々村「でも何割かはまじめな先生とかまじめな生徒がいないと、さすがに崩壊すると思うぞこの学校」
高木「生徒会執行部からしてこうですもんね」
安本「さっきからずけずけ言うねえおまえ」
水木「なあ、この中で、ちょっとでも探険隊に入ろうって思ってた奴いる?」
全員「……」
水木「いないよな。俺、この執行部も変な奴の集まりだと思ってるんだけど、どうも探険隊と方向性が違うんだよな。別に俺たちが普通よりまじめとか、規則に厳しいとか、そういうわけでもないのに」
野々村「それは前に寺口先輩が言ってたことで納得した」
安本「何て?」
野々村「俺たちは生徒全体を見て行動するけど、探険隊は生徒を背中にして外を見て行動するって」
水木「ああ、成程……」
高木「生徒の集団に頭から突っ込んでく感じがしないでもないですけど、探険隊は」
野々村「でも『生徒を扇動しよう』と思ってやってるわけでもないだろ。結果的に騒ぎになるとしても、あの人たちは自分たちがやりたいことをやりたいようにやるだけで」
安本「なるほどなー」
水木「生徒会と敵対はするわけだ。こっちは探険隊だけを特別視するわけにいかないもんな、君たちも生徒たちの輪にちゃんと収まりなさいと」
高木「何かモグラたたきみたいですね」
安本「ピコピコハンマーくらいじゃ殴っても引っ込まないけどな、あいつら。寺口会長がピコピコピコピコピコ音させるのがおもしろくて余計騒ぐだろうし」
野々村「……しかも会長も、そのピコピコ鳴るのがおもしろくて仕方ないみたいだしな……」
全員「……ああ……」
高木「あれっ、そうすると、そのピコピコハンマーってもしかして俺たちのことなんですか? 振り回すのが寺口先輩で」
安本「伊東なんかおっきくピコピコしてる」
高木「おもしろいですよねー」
水木「それにしても、寺口会長といい大高先輩といい、3年生っていうか受験生なのに課外活動をやめないところがすごいよな」
野々村「寺口先輩は、自分が退陣したら絶対大高先輩が生徒会を乗っ取る気だからできなかったって言ってたけど」
安本「やりそうだよな、おもしろいからって」
水木「寺口会長が引退したら、まあ大高先輩も探険隊から身を引くにしても、会長の存在感なしに俺たちだけであいつらと渡り合うって、結構おっかないよな」
高木「大高先輩の後って、誰が引き継ぐんでしょうね? やっぱ一番仲いいっていう磯崎先輩?」
安本「あいつぶち切れたら大高先輩とタメ張るしな」
野々村「いや、でも磯崎はニュートラルな状態では落ちついてるし紳士だぞ」
水木「そもそも普通の人間は何があったってあそこまでぶち切れないと思うけどな……」
安本「杉館か月島もありじゃないかと思うな、俺」
野々村「杉館は統率がうまいし、月島は素で大高先輩に並ぶくらいお祭り好きだもんな」
高木「1年の間じゃ、碧川先輩が隊長になったらおもしろいなって話もありますよ」
安本「可哀想じゃん、碧川じゃ。大体何であいつが探険隊にいるのかよくわかんねーし」
高木「ほらだから、逆にうまく手綱を取れるんじゃない? みたいな。碧川先輩が泣くからおとなしくしてようとか」
水木「それはないんじゃないかなあ、おもしろいけど。あるとしても副隊長とか」
安本「あー、どっちかってぇとそのタイプな、碧川。七瀬先輩もおっとり系じゃん、優しいし」
野々村「……それ本気で言ってるのか、おまえ……?」
安本「何がよ?」
野々村「……いや、知らないならいいんだけど」
高木「こっちは会長引き継ぐとしたら、やっぱ野々村先輩ですよね」
水木「うん」
安本「だな」
野々村「でもうちは指名制でもないわけだし。執行部内でも一般生徒でも、他に適任がいたら別に俺じゃなくても」
安本「探険隊が立候補したらおもしろいよな」
野々村「……そしたら俺は立候補はしないけどな。……あいつらと戦いたくないから……」
高木「でも俺たちが推薦しますよ。ねえ」
安本「するよな、普通に」
野々村「おまえたちが立候補してもいいんだぞ?」
水木「えっ、やだ」
高木「嫌ですよ」
安本「やだよなあ」
野々村「……おまえら……」
高木「大丈夫ですよ、野々村先輩、寺口会長のサポート完璧じゃないですか!」
安本「そうそう、曙橋の明日を担えるのは野々村君だけ!」
水木「俺たちはちょっと離れた場所から野々村が探険隊と丁々発止を繰り広げるさまを見物してるから」
野々村「待ってくれ、せめて加勢してくれ」
安本「伊東が行くから大丈夫」
野々村「全然大丈夫じゃないだろそれ」
高木「卒業まで飽きなさそうだなあ」
安本「なー」
野々村「俺は何か胃が痛くなってきた……」


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