こころなんてしりもしないで・第1話

 恋心というものは、どうやら意識なんてしてもしなくても勝手に芽生えてしまうものらしい。
 たとえそれが同性、これまで恋愛対象に入るなんて思ってもみなかった『男』だとしても。
 たまたま相手が自分と同じ男だったのか、もともとそういう素養があったのか、何しろこんなふうに坂を転げ落ちるみたいに相手を好きになったことなんて初めてだったので、わからない。
 二十七歳にもなった今、それなりに分別がついていると自負していた佐山には、それは割合衝撃的な恋だった。

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