平和な夕方、インターホンが鳴ったので応答したら「消防です」って。
今回は別に火事らしき気配もないし(前回)、覚えがないので「うちは呼んでませんが?」と答えたけど、向こうが困惑しているのでとりあえず玄関先に出てみたら、救急隊の人が四人くらいいて、救急車も到着していた。
何しろこの家に引っ越してからでも四回? 五回? 急病で救急車呼んだ経験があるので、心当たりがないとはいえず、「私はもしかしてすでに死んでいて、同居人が救急車を呼んでいたのか…!?」などと混乱する。
でも同居人は「生きてるよ!」って言うから生きてるらしい。当然彼女も119番していない。
困惑していると、「ここは(マンション名)の(号)室ですよね」と救急隊員に訊ねられる。まさに我が家である。
でもやっぱり心当たりがないので「うちは呼んでないです」としか言いようなく。
相手も、我々がそう言っている以上どうにもならんので引き下がった。
が、数分後、再びチャイムが。
救急隊の人がもう一度「救急に電話してませんか?」と。
してないのでしてないと答えるほかない。向こうも申し訳なさそうだが、こっちも何でか申し訳ない。
救急隊の人「Y田さんという人から、ここに怪我人がいると連絡があって…」
誰Y田。知らん。
ちなみに東京砂漠に生きているので隣人の名前も知らん。隣じゃないですかと言うも、隣でもないらしい。
通報すると即場所がわかるらしいので、うちじゃないなら階層違いではと思い「上か下の階ですかね、怪我人がいるなら早く行ってあげてください」と言うと、救急隊の人たちはまた去っていく。
同居人と、「部屋番号間違えて通報したのかな、でもこれだけ騒がしいから通報した当人がいたら出てくるよね、何なんだろうね」などと話していると再びピンポン。
今度は警察が来た。
消防と同じことを聞かれる。手にしているタブレットに、うちの住所と、Y田という名前が手書きでメモしてあるのが見えた。最近は警察もタブレットなんだな。
でもやっぱり通報したのはうちじゃない。
「何か大きな声や騒ぎを聞きませんでしたか?」
続けて警察に訊ねられる。
雰囲気からして、どうもただ病人や怪我人が出たかもというわけではなく、何らかの事件性があるっぽい? そのために救急車だけでなく警察もやってきたようです。
俄然ワクワクしてしまって申し訳ない。
実は近所に時々叫び声と物音でうるさい家があるけど、今日は特に何もなかったので、結局「特にはなかったです」と答えるしかない。
うちが通報したのでは、っていうのを消防も警察も疑ってるみたいで、割と喰い下がっていろいろ聞かれたけど、どうにも心当たりがないんだよ。すみません。
何の成果も得られず警察撤退。
仕事してたんですがおかげですっかり集中が切れてしまい、おなかもすいたので、夕ごはんを食べる。
お米を口に入れたところでまたピンポン来た。
慌ててもぐもぐしながら応対に出るとまた消防の人が玄関前に立っている。
「お食事中にすみません…!」
めちゃくちゃ頭を下げる消防の人ガチで申し訳ない。いや私が申し訳ながることもないと思うんですが、本当に常日頃から消防の方にはお世話になっているので、本当は協力したいんだけど何の情報も持ってないんだ…。
消防の人が手に書いた数字を見せて、「電話番号の末尾、これじゃないですよね」って訊ねてくるけど、うちの固定電話でも携帯番号でも同居人の番号でもない(うちはルームシェアなので都合4件分電話番号がある。というか私が複数携帯契約してるのであと三つある。通信ばっかりで電話使ったことないけど)。
本当にすみません、すみません、警察がまた来るかもしれません、と言って消防の人たちが去っていく。
面白がって申し訳ないんですが、いや落ち着かないというのもあって、こっそりインターホンをオンにして外の様子を窺ったりしていた。
「Y田っていう人はここに住んでないらしい」
「電話はかけてないって言ってる(多分うちのこと)」
「かけ直しても出ない」
みたいな会話を警察がしているのを立ち聞きしてすみません。
しばらく外でたくさんの人がざわざわしていて、救急車と警察車両がいっぱい停まってるので野次馬もすごかったですけど、ごはんを食べてしばらくしたらみんないなくなっていました。
何だったんだろうな?
うちが通報したと疑っているのであれば、固定電話もスマホも目の前で鳴らしてくれてもよかったんだけど、特にそんな作業もなかった。
警察大好きなのでもっとあれこれあったらよかったのに、時間を取られた割によくわからんまま終わってしまった。
事情が気になりつつ、私のせいでうちにしょっちゅう救急車が来るから、近所の人に「またあそこの部屋の人が救急呼んでる」って思われそうだな。
いや前回の火事騒ぎの時は隣室だったので、向こうだと思われるかな。
警察に事情を聞かれたのは喪服の死神事件の時以来です。
喪服事件(知らん人は調べてくれ)の時にジャンルで活動していたので、ビッグサイト(インテだったかも)で本を売っていたら私服警察が来て「何かサークル同士の揉めごとなどなかったか」というようなことを聞かれたんですが、「友達がいないので何もわかりません…」と悲しい気持ちで答えたら、若くて可愛い婦警さんにまで「そ、そんな」って悲しい顔をさせてしまいました。
いつだって私は何もわからない。
事件があって怪我人が出たっていうなら、怪我してる人が無事手当てしてもらえるといいよね。