【月刊連載】「悪女はメイドに甘やかされたい」10日/「死神と令嬢(原作)」第2金曜日更新/「令嬢ランキング(原作)」28日

映画『落下の王国 4Kデジタルリマスター』観てきたNew

11月21日(金)公開『落下の王国 4Kデジタルリマスター』公式サイト。17年の時を超えてスクリーンに蘇る、目も眩むほどに美しい圧巻の<映像詩>的アート体験
rakkanooukoku4k.jp
映画『落下の王国 4Kデジタルリマスター』本予告【11月21日(金)公開】

ストーリー

時は1915年。映画の撮影中、橋から落ちて大怪我を負い、病室のベッドに横たわるスタントマンのロイは、自暴自棄になっていた。そこに現れたのは、木から落ちて腕を骨折し、入院中の5才の少女・アレクサンドリア。ロイは動けない自分に代わって、自殺するための薬を薬剤室から盗んで来させようと、思いつきの冒険物語を聞かせ始める。
それは、愛する者や誇りを失い、深い闇に落ちていた6人の勇者たちが、力を合わせて悪に立ち向かう【愛と復讐の叙事詩】―。

(公式サイトより)


2008年に公開された映画のデジタルリマスターらしい。

私は公開当時まったく知らなかったんですが、最近自分の好きなクリエイターさんたちがSNSでこぞりて絶賛しているのを目にして興味を持ちまして。

映像美をうたっているだけあって、圧巻の画面でした。
私は現実の方の画面がより好きで、1951年の建物、服装、人の体の形、構図、雰囲気、全部がよかった…!
幼女とおっさん(青年?)もよかった…。

ネタバレ注意

以下ネタバレ感想がありますのでご注意ください

羅小黒戦記の時も感じたんですが、「子供を騙す大人」というのが私はずっと絶対に許せなくて、ロイのことも許さない…と思ったけど、ちゃんと生きてスタントマンとして成功してそれがアレクサンドリアに伝わっているので、まあ…。

「許せない」というのは映画に対して許せないというのでも、ロイというキャラクターが許容できないというのでもなく、「許せない男として好き」という感じなので説明が難しいな。
アレクサンドリアが目覚めた時、酒浸りになっているのを観て膝を叩いて大笑いするくらいに許せませんでした。おまえすごいな!

一番好きなのは、そのアレクサンドリアが観ていた夢のシーンでした。薬を取りに行くところから目が覚めるところまでの流れと映像の切り替わり、その世界観が好みで好みで。

ロイの語る夢の世界は美しい空虚、アレクサンドリアの悪夢は子供の現実、という感じの表現で密度も肌感も違うのがおもしろかった。おもしろい、と言ってしまうとアレクサンドリアの状況の苛酷に対してきっとあまりに軽すぎますが。angry peopleがたくさん来て…と語るところが怖ろしくて悲しくて、ぞっとする。
ロイがそれを大袈裟に受け止めすぎないところが(というか受け流しているのが)優しさからなのか、自分の現実で手一杯だからかはわからないんですが、よかったな。
あとアレクサンドリアが子供らしく意味がわからないことに対して笑って流したり、ロイがそれをもどかしく思いつつも苛立って叱りつけたりはせずに根気よく話すところもよかったです。まあロイは自分の目的のために堪えてたんでしょうが、本質的に優しい人なんだろうな。優しいから傷つきすぎている。同情的に大袈裟に騒いでアレクサンドリアを言いなりにさせるのではなくて、お話で気を惹いて思い通りにしようとするのが、優しくて許せない。自分が死んだ後は部屋に来てはいけないと言うところも。风息並に許せない。
アレクサンドリアは馬と家と父親以外のものは手許に残っているんでしょうか。ちゃんとした病院できちんと治療が受けられる環境だとしたら、今後の人生は苛酷なものではないのかな。だといいな。

アレクサンドリア視点ではあるけど、アレクサンドリアの内面・何を考えているかはほぼ語られておらず、でも表層に表れる部分や彼女の見る悪夢でそれがわかるようになっている作り、書き込みの丁寧さや周到さがすばらしかった。実は映像美よりも構成というか構造のすごさの方に圧倒されていました。大画面で観てよかったなとは心底思います。

観た後にいろいろ思い返して「あそこはああいうことだったのかも」「あれはこういう表現だったんだな」と脳を動かしている、何度でも楽しめる映画でした。上に書いたことも私の解釈なので合ってるかどうか、他の人と一緒かどうかは全然わかんないですが、自分の中でこね回して楽しいので、いい時間だった。

行く前は何の話かもわからず、でもネタバレとか踏んだら嫌だなと思って情報を入れずに行きましたが、ネタバレがどうという映画ではなかった。あらすじを知ってからでも楽しみ方に変わりがないというか。
ひとつネタバレがあるとしたら猿は死にます。動物が死んだのに悲しい気持ちにはならず、むしろメタ的なところで発生する笑いが止まらず(ごめん笑うところだったのかはわからない、私は内心大爆笑だったんですが、観ている人は誰も笑っていなかった)、そう、ロイの語る物語のメタ要素が作る笑いが面白すぎて、特にみんなの死に様が大好きすぎてすごかった。オウディアスの死に様は私の中の好きな死に様ランキング一位かもしれない。

あと映画館の予告におもしろそうなのがいっぱいあったから、タイミングがあったら他のリマスターも観たいな。