「飛龍伝 2022~愛と青春の国会前〜」

舞台


■作  つかこうへい

■演出 錦織一清

■あらすじ
この国の『革命前夜』1970年。
新しい日本を夢見た全共闘・神林美智子と、今の日本を衛る為に命を賭けた機動隊・山崎一平のイデオロギーを越えた純愛物語。
鬼才つかこうへいが描いた革命的青春群像劇が時代を越えて蘇る。
11.26 国会前―――、永遠の愛を誓い合った二人の最終決戦が、今始まる!

■出演
 一色洋平 井上怜愛 小山蓮司
 青野竜平 三浦ゆうすけ 草野 剛 大江裕斗 及川いぞう 他

ものすごく久々の飛龍伝。
「エゴ・サーチ」を観に行った時、同じ紀伊國屋だったのでチラシ貼ってあったのを見てその場でチケットを買いました。
一色洋平の山崎一平、すごくよかったですね…! 明るさ、愚かさ、必死さ、優しさ、みじめさ、でもやっぱりとんでもない優しさ、っていう私の山崎の好きなところが全身全力で現されていて、ああいいもん見たなあ…! っていう。
小山蓮司の桂木もよかったです、品のいい美形、小ずるさ、でもすごい純真さがあって、その辺りが令和風のイケメンっていうんですかね泥臭さとはちょっと違う桂木の別側面を垣間見せつつやっぱり桂木は桂木なんだよ、っていう説得感。桂木は何て言うかスターなんですよね私の中で。俺を総括するのか、って這い蹲っててもスター。華がある…。
井上怜愛は現れた時に小柄すぎて不安になって、でもこんな小柄で可憐な女の子が色んなものに翻弄されて死んでいったんだよなあ…っていうのが胸に沁み…。

懐かしい名前もちらほら。
そして頭に刻み込まれている台詞の数々が、やっぱり飛龍伝の、つかこうへいの厳しさ優しさとんでもなさを思い出させる…。

ATTENTION

※以下回顧厨による繰り言があるためご注意ください※

今回は神林美智子とそれを取り巻く男たちではなく、山崎一平と桂木順一郎とそのそばにいる神林美智子のお話なんだなあという理解でした。

飛龍伝はあれこれ観てきてますが、私の中ではどうしてもダブルス(筧利夫×広末涼子×春田順一)がすさまじく全身に刻まれていて、未だにWOWOWで放映されていたものを見返してしまうんですが、それに比べると令和の飛龍伝はかなりマイルドで平易に、とてもわかりやすく、言うてしまえば生温い内容になっていました。多分そうしないと誰にも見られないのかもしれない…と思いつつ、でもやっぱりあそこはああしてほしかった、こうしてほしかった、と思ってしまうのはどうしようもない許してくれ。
このご時世、女性の生きづらさや貧困、学歴などの表現は難しいんでしょう多分。安保当時を私は知らないけど、今でも女性の生き辛さ、貧困などはきっちり残っているのに、あの頃と意味合いが異なりすぎていて、もはや再編成し辛いのかもしれない。2003年では伝わった、美智子の母の「やってらんねえよ」という台詞が、もはや理解されない時代なのかもしれない。美智子が「バカヤロウ」と男を殴る爽快感は伝わらないんだろうな。

辛い台詞を言わせないのは、茶化して表現してしまうのは、演出の人の優しさなのかもなあと思いながら焦れったい思いで見ていました。
ギャグが多かったのはその一貫なんだろうか…つかさんも時事ネタのヤバいやつをガンガン入れる方でしたが、今回は何というか、しつこく、タイミング悪く、なんでせっかくのこのシーンでそんな笑いを入れるんだと、そこは正直救いようなく肌に合わなくて、ただ会場の大半を占めていた年配の方は声を上げてゲラゲラ笑っていたのでまあノットフォーミーだったのかもしれませんが、その笑いのせいで肝心の役者さんの台詞が掻き消されたり、笑うはずの台詞じゃないのに笑われたりと、何だか身の置き所がない時間がたびたびあった…。
なぜか故郷に帰る山崎が美智子に対して思いを綴るあの名シーンの長台詞で観客が笑っているから、私は泣きそうだったよ。
第一機動隊の隊員が辞めていくところも悪い意味で印象的で、無知の知であってほしいシーンで無学は本当にバカで嘲笑していい対象、という描かれ方(に私は受け取れてしまった)のが、どうしようもなく辛かったです。
昔馴染みの役者さんの内輪受けもキッツかった、私は元々演劇での内輪受けが無理なので私個人の問題かもしれませんがというかすべて個人の感想ですが。

苛烈さを失い、笑いの中の先鋭的なエッセンスを失い、神林美智子は神性を失い徹頭徹尾ただの女として描かれ、それでもつかさんの残した爪痕は耳馴染みのある台詞において確実に飛龍伝の中に残っていて、それがもうひたすらにすごいなあと思う。
今の時代にダブルス当時の広末涼子を観ると、つかこうへいを敬愛している私であっても、「おっさんが若い女の子をショーケースに入れてエグいシーンを演じさせて楽しんでいるグロテスクさ」を指摘されたら、違うとは言えない気がしてしまう。
あの時許された表現は演劇であっても、劇場の中のたった数時間であっても、許されないんだろうかと思うと気が遠くなる。
もういっそ「当時の表現を優先して完全オリジナルでやってます」って断り書きの上に時代に合わせた修正とかなしでやった方がいいんじゃないかなと思うんですが、オリジナルがないっていうかどれがオリジナルかわかんないんだからしょうがないか。

いろいろ書いちゃったけどメインの役者さんたちは本当にすごくよくて、特に一色さんと小山さんは出色だったなあと思います。北区が解散した時から足が遠のいてたんですが、小山さんが副座長だっていうのを知って興味が出たので、寝取られ宗介のチケットも取ってみた。令和の寝取られ宗介はどんな感じなのか楽しみです。これは舞台で観たことないから回顧厨が頭を出さずに素直に楽しめる気がする。

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Posted by eleki