商店街を散歩する

日常あれこれ

先日散歩がてら出かけた先で、突然商店街をみつけた。

この家でルームシェアをはじめてかれこれ二年以上経つのに、頑張れば歩いて行ける距離に商店街があることになど、まったく気づかなかった。

その日、一度行ってみたいご飯屋さんがあったのでバスで向かったら、残念ながら定休日で、近くにもう一軒行ってみたい店があったから移動してみたけどやっぱり定休日で、日曜日なのに何で食事処が休みなのだろう、と首を捻った。

「ここ、もしかしたら商店街か…?」
と気づいたのは、見渡すかぎり誰もいない、きれいに舗装された道に点々と立つ電柱(だとその時は思っていた)から、妙に楽しそうな音楽が流れてきたから。
向こう百メートルほど、本当に人っ子一人歩いておらず、両脇にはシャッターの閉まった店が並び、半分くらいは看板すら取り外されている。
営業しているのは唯一小さな花屋さんだけで、そこにも客はおらず、ものすごくシュールな眺めで、なんだか頭がぼうっとしてしまった。

ものすごくいいお天気の日だったんです。
少し肌寒いけど空は快晴、道路だけ最近新しくしたのかやたらきれいで、シャッターの閉じられた店の建物は昭和の頃に建てられたのではと疑いたくなるほど年季が入っている。
十数メートルごとに立つ柱に据え付けられたスピーカー(よく見たら電柱じゃなかった)からは、聞いたことはないけど明るい音楽が延々流れ続けている。

ここは一体何なんだろう。どうしてみんな日曜日に一斉に休むんだろう。
店は半分くらい潰れているのに、どうしてまだ商店街として存続できているんだろう。

ものすごく不思議だったんですが、しばらく歩いてみてわかった。
なんのことはない、近くに大きな団地があるからだ。
普段使う駅やスーパーからはまったく違う方角にあって、結構大きな団地なのに、存在すら知らなかった。
ここはその団地に住んでいる人たちが使うための商店街で、平日が休みだと日常生活に不便だから、日曜日に一斉に休むんだ。

ものすごく当たり前のことなんですが、なんだかやたらびっくりしてしまったよ。

しかしあまりの廃墟ぶりに、果たして平日本当に店が開いているんだろうか…と気になったから、数日後に改めて商店街に向かった。
そしたら、洋品店とか、金物屋さんとか、小学生のノートやえんぴつなんかを扱っている文具屋さん、白菜ひとつ90円の八百屋さん、精肉店、パン屋さん、たわしやカネヨンを扱う薬屋さん(決して『ドラッグストア』ではない)、お弁当屋さんなどが、ちゃんと開いていた。

商店街のある街で暮らしたことなどないのに、異常な懐かしさを感じた。
普通に暮らしている人がいるのに、ノスタルジーを感じてグッとくるのは失礼な話なのかもしれませんが。
商店街、いいなあ。
野菜が安いのがいいです。近所のスーパーの半額以下だった。
安い野菜を求めてバスに乗るのは馬鹿らしいけど、自転車なら通えないこともない気がするので、お天気がいい日は半分死んでる商店街に通おうかな。
パンも安くておいしかった。やっぱり近所のパン屋の半値くらいだった。

おいしそうなパンを袋いっぱいに買ってほくほくしながら帰る道で、強い風が吹いて、ポコポコ頭に何かが当たるからびっくりした。
どんぐりでした。
どんぐりが雨みたいに降って、私にポコポコ辺り、地面ではねて、通りすがったおばあさんがしゃがんでそれを拾っていた。

ものすごくグッときました。

最近は体調もよくなったのでまたぞろ旅行熱が盛り上がってきたけど、よく考えたら自分が住んでる街のことも、ごく近所とか駅前のことしかよく知らないのだと思い至る。
わざわざ遠出せずに、身近なところからいろいろ探索してみたくなってきたよ。

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Posted by eleki