佐々木ミノル「中卒労働者から始める高校生活(10)」


ずっと楽しみに読んでる通信制高校を舞台にした漫画。
ものすごく劇的に何かが起こるわけじゃないのに今回もすごくおもしろい。
しかし10巻、松井さんが何となく不安だ…無事卒業できますように…辛いエピソード来ませんように…。

作者さんのTwitterあるんだーと見に行ったら不穏な…。


10巻の引きからして辛くならない理由がないと思うんですが、とにかく真実頑張ってくれ莉央ちゃんをあまり悲しい目に遭わせないでくれ…と願うばかり。
真実がずっと不安定で、もう成人したのにすごく少年ぽさを残していて、莉央ちゃんの方が先に大人にならないとうまくいかないのではと思えて切ない。
片桐父とうまいこと決着つけてほしいけど、真実だけじゃなくて真彩の分もあるから、実は止むに止まれぬ事情があったとか、ただ許したりとか、許せないけど家族だから絆が切れないみたいな解決じゃないといいなあと思ってしまう。心が狭い(わたしの)。
だって片桐兄妹大変じゃん…どんな事情があろうとなかろうと、真実や真彩が大変なことには変わらん。真彩はそんなことないよ楽しいよって笑うだろうけど。そこがさらにしんどい。
真実はきっと自分一人なら自分の立場に耐えられるし許せるだろうけど、真彩がいるから許せない、でも真彩はそうやって兄が苦しいのが嫌で、みたいなグルグルしたやつが見たい。というかすでにそこが好きなんだけど。
たぶんそのあたりに斬り込んでいくから「幸せな場面」がしばらくないんだろうなあと勝手に予測している。
あと莉央ちゃんがどう出るかちょっと怖いけど、彼女自身母親との距離があるから大丈夫だろうか。
不安だけど、楽しみだなあ。

1巻から毎回毎回何かしらにモヤモヤするんだけど、モヤモヤしながらずっと読んでる。設定とか展開とかキャラクターの言動とか。
みんな未熟だしいい人はいないし(松井さんくらいか? でも松井さんも学校だと好好爺だけど昔はちょっと…とかあっても不思議じゃない)、痛々しくて、でもその辺りが『高校生』に自分が求めてるものなので楽しい。
設定はかなり漫画っぽい、っていう言い方もあれだけど、不幸な生い立ち不幸な人生、性的虐待、シングルマザー、お嬢様とお付きの青年、みたいに割と誇張されたキャラクターばかりなのに、すごく生っぽい漫画だなと思います。

そしてこの本を読むたびに毎回挙げてる気がするけど、岡野史佳さん「地上の星座(花とゆめコミックス」の続きが読みてぇんだ~~~~。


こちらは夜間学校ですが。
わたしは『十代』が好きだけどそれ以上に『高校』が好きで、高校に通っている時だけに生まれるヒリヒリした感じが味わえる漫画が好きで、中卒ワーカーもそうだし地上の星座もそうだけど『本来高校に通う年齢ではない』人が高校生の枠の中でわちゃわちゃやってるのがたまらんのだと思う。
マイボス☆マイヒーローとか…。

高校は高校のよさがあって、『一般的な(多くの人がそうしている)高校生活を送っているわけではない』というのが、逆に、『高校時代』を感じさせるのだ。甘いものに砂糖入れると甘味が引き立つみたいな。

中卒労働者から始める高校生活ドラマ化とかされそうだけどされないのかな。
でもされたとしたらキャラクターの設定や立ち位置がさらに誇張されて展開もテンプレになりそうだならされない方がいい気はする。